スラッシュメタル
Thrash Metal
成立1980年代前半発祥米国(湾岸・フロリダ)/独(Teutonic)全盛 1985〜1991年
刻むリフと疾走するドラム。速さを構築美へ変えた、80年代メタルの臨界点。
針の先で刻むダウンピッキング(down picking)、その連打が胸をどついてくる。スラッシュメタル(thrash metal)を初めて浴びたとき、速いとか激しいとかより先に、リフの角が皮膚に刺さる感覚が来た。ここには美化された旋律の甘さがない。あるのは削り出したギターの刃と、走り続けるドラムの推進力だ。
1980年代前半、アメリカで鳴りはじめた。NWOBHM(英国の新しいヘヴィメタルの波)が磨いた硬質なリフに、ハードコアパンク(hardcore punk)の攻撃的な速さとドラムをぶつける。その交点で生まれた音がスラッシュだった。きらびやかなグラムメタル(glam metal)が売れていた同じ時代に、化粧も甘い歌もいらないと背を向けた連中がいた。サンフランシスコ湾岸(Bay Area)と、海を越えたドイツのルール地方。二つの工業地帯で、ほぼ同時に同じ衝動が火を吹いた。
Metallica、Slayer、Megadeth、Anthrax。この四組が「Big Four」と呼ばれ、ジャンルを世界へ押し出した。ドイツでは Kreator、Sodom、Destruction が同じ速度で刻んでいた。彼らに共通するのは、リフを歌のように立たせる構築力だ。刻みの一発一発に意味があり、展開の呼吸で聴き手を掴んで離さない。
Slayer の『Reign in Blood』に針を落とした日のことは、今も肋骨が覚えている。29分、無駄がひとつもない。速さが暴力ではなく設計として鳴っていた。あの緊張の連続が、私に音楽の別の入口を教えた。
代表盤
Essential Albums1986
Metallica
Master of Puppets
スラッシュを構築美の頂点へ引き上げた一枚。
1986
Slayer
Reign in Blood
29分、無駄ゼロ。極限の速度と緊張の設計。
1990
Megadeth
Rust in Peace
超絶技巧とリフ構築の到達点。
1987
Anthrax
Among the Living
NYの跳ねるグルーヴとモッシュの衝動。
1985
Exodus
Bonded by Blood
湾岸シーンの起点となった生々しい攻撃性。
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