2007年、2008年——あの数年のメタル誌の新譜ページを覚えている人ならわかる。若いスラッシュ・メタルのバンドの名前が、ほとんど毎号のように増えていた時期だ。Bonded by Blood、Evile、Hatchet、Havok、Municipal Waste。彼らはまとめて「スラッシュ・リバイバル」と呼ばれた。あの熱狂は流行で終わるのか、本物だったのか——その問いに、十数年経った今もっとも明確な答えを返しているのが WARBRINGER(ウォーブリンガー)だ。リバイバルの只中に米カリフォルニアから登場し、シーンの熱が引いた後も止まらず、2025年に7枚目を出した。
2000年代スラッシュ・リバイバル——WARBRINGERが現れた場所
スラッシュ・メタルは1980年代後半に頂点を迎え、1990年代に入るとオルタナとグランジの波で表舞台から押し戻された。死んだわけではない。地下に潜って息を潜めていた音楽が、2000年代後半に世界各地の若いバンドの群れとして再び地上に出てきた。スレイヤー(Slayer)やエクソダス(Exodus)を浴びて育った世代が、自分たちの言葉でスラッシュをやり直す——そういう構えで揃って動いた集団的な現象だった。「リバイバル」という言葉は流行への揶揄を含んで聞こえるが、起きていたのはむしろ継承の試みだ。
WARBRINGERはその只中、2004年に米カリフォルニアのニューベリーパークで結成された。ロサンゼルス周辺の地下スラッシュ・シーンで叩き上げられ、裏庭のパーティめいたライブからサンセット・ストリップのステージへ上がっていく。地元のライブを観た Century Media が声をかけ、2007年に契約が決まった。重要なのは、彼らがこのシーンの「ピーク」に乗っただけのバンドではなかった点だ。リバイバルが鎮静化した2010年代も、世代が一回り入れ替わった2020年代も、活動の手を緩めていない。
『War Without End』(2008)——リバイバルの本気度を見せたデビュー作
2008年2月、Century Mediaから1stアルバム『War Without End』がリリースされた。プロデューサーは Bill Metoyer が手がけている。1980年代からSlayer、Sacred Reich、D.R.I.、Armored Saintを録ってきた、メタル・ブレイド系スラッシュの底の硬い音を作ってきた人物だ。当時の彼が、20代のWARBRINGERの音をどう録ったか。磨きすぎていない。各楽器の輪郭が前に出て、リフのざらつきがそのまま残っている。リバイバル組の多くが80年代の名盤を「再現」する側に寄っていたなかで、本作はそれより一段、踏み込んでいた。
耳に残るのは、ジョン・ケヴィルのヴォーカルだ。汚れていながら、発音の輪郭は崩れない。歌詞の音が立ったまま、余裕のない速さで前に出てくる。リバイバル組の中で、彼の声はかなり特異だった。メロディに寄り切るでもなく、シャウト一辺倒でもない。スラッシュの原型に近い「叫び続けるが言葉が立つ」声を、20代前半の若さで持っていた。
『Waking into Nightmares』(2009)——Gary Holtが磨いた精度
2nd『Waking into Nightmares』のプロデュースを担当したのは、Exodusのギタリスト Gary Holt(ゲイリー・ホルト)だった。スラッシュの当事者中の当事者が、リバイバル組の音を整える側に回ったわけだ。結果として、1stのざらついた録音から一気にタイトさが上がった。ドラムは粒が立ち、ギターの輪郭が硬くなる。「Scorched Earth」のように、リフが弾丸の速度で並んでも音像が崩れない。
面白いのは、Gary Holtが磨いてもバンドの粗さが消えなかった点だ。彼は「整える」ことをしたが、「丸める」ことはしなかった。プロデューサーの選択がここまで作品の質感に影響する例は珍しい。1stと2ndを並べて聴けば、Bill MetoyerとGary Holtという二人の手仕事の差が、そのままバンドの成長として記録されているのが分かる。
『Woe to the Vanquished』と『Weapons of Tomorrow』——拡張する音像
2017年の5th『Woe to the Vanquished』で、WARBRINGERは明確に変質した。スラッシュの骨格は残しつつ、ブラック・メタルとデス・メタルの語彙を本格的に取り込み始めている。アルバムを締める11分の大曲「When the Guns Fell Silent」を聴くと、彼らが「速くて重い」だけのバンドではなくなったことが分かる。この曲を、アイアン・メイデン(Iron Maiden)が書いたとしても誇れる一曲だ、と書いた海外レビューがある。スラッシュの周辺にいながら、ストーリー性とダイナミクスを正面から組んだ仕事への評価だった。
続く2020年の6th『Weapons of Tomorrow』では、踏み込みが深まる。「Defiance of Fate」「Heart of Darkness」のような長尺の曲が増え、楽曲の構成は複雑化していった。メタリカ(Metallica)の『…And Justice for All』をスラッシュ・ストレートに転がしたような、長尺で重層的なリフ展開だ。発表当時の海外レビューは、これをバンドのスタジオ作の最高到達点として扱った。
音像が拡張しても、リバイバル組の核は消えなかった。彼らは進化したが、別のジャンルへ越境したわけではない。スラッシュの骨格を背骨に、その上で語彙を重ねていく方法を、十数年かけて磨き直してきた。
『Wrath and Ruin』(2025)とWARBRINGERの現在地
2025年3月、Napalm Recordsから7th『Wrath and Ruin』がリリースされた。前作から5年。その間に貯められた言葉が、ここで一気に外へ出ている。先行シングル「A Better World」は、タイトルの明るさが皮肉として効く。ケヴィルはインタビューで、世界はよくなっていくという若い頃の前提が崩れたと語っている——気候も、格差も、監視も。怒ってはいるが、扇動ではない。観察と分析の声で書かれた8曲が並ぶ。
“At the very least, it’s more incredible warbringer which is just top tier thrash metal.”
「少なくとも、これはまた”とんでもないWARBRINGER”だ。要するに最上級のスラッシュ・メタルってことだよ」
— Reddit / r/MetalForTheMasses
2026年4月にはオーストラリアを回った。キャンベラからブリスベンまで5公演。シングル、アルバム、ツアーという制作と移動のリズムを、20年以上落とさずに保っている。
「リバイバル」が「シーン」になるまで
WARBRINGERが7枚を残したという事実が、2000年代スラッシュ・リバイバルへの最大の応答だと私は聴いている。流行は流行で終わる。シーンはシーンとして残る。当時の名前が消えたわけではない。Evileは2023年に6枚目を出し、Hatchetも新作を届けている。それでも、デビューから17年で7枚を積み、途切れずに音を更新し続けた例は、あの群れの中でも多くない。
WARBRINGERは追える。新作が出れば、十数年前のデビュー作と同じ精度で耳が反応する。一発のブームではなく、長く続くシーンの一翼として、彼らは存在し続けている。
もし未聴なら、入り口は『Weapons of Tomorrow』か『Woe to the Vanquished』を勧めたい。1stと2ndから入ると「リバイバル組の若さ」が前面に出て、彼らの本領を取り損ねる可能性がある。中期以降のWARBRINGERは、スラッシュという形式のなかで書ける物語の幅を、いまも更新し続けている書き手たちだ。

