マンチェスター(Manchester)の GUILT TRIP という5人組の名前を、この1年で何度か目にした人もいるかもしれない。2025年9月に Roadrunner Records 契約のニュースが出て、翌年2月には不意打ちの EP『God Forgives』が落ちてきた。3作目『Armour of Angels』は2026年6月5日に出ている。UK メタリック・ハードコアの最前線が、ここで一段ギアを上げている。
GUILT TRIP は2015年にマンチェスターで結成された。デビュー作の『River of Lies』(2019、BDHW Records)と2作目『Severance』(2023、MLVLTD)を経て、Roadrunner Records と契約することになる。北イングランドの汚れた音が世界の流通量に乗り直す瞬間を、リアルタイムで見られる回数は何年に一度かしかない。
UK メタリック・ハードコアの現在地
UK メタリック・ハードコアという呼び方は、米国の Knocked Loose や日本でのスラッシュコア寄りの使われ方とは少し違う温度を持つ。シェフィールド(Sheffield)の マレヴォレンス(Malevolence) が2010年代に北イングランド発のヘヴィな轟きを世界へ運び、その後ろから同じ北イングランドのバンドが何組も浮上してきた。
音の手触りには共通する要素がある。スラッシュの速さ、伝統的なハードコアのモッシュ・パート、メタル側の音作りの分厚さ——その3つを、汚れたアンプ録りに近いザラっとした表面で揃えて鳴らす。米国メタルコア勢が好む磨いた質感は、ここでは採られない。
GUILT TRIP はマンチェスター、ペスト・コントロール(Pest Control)はリーズ(Leeds)、マレヴォレンスはシェフィールド。3つの都市が産業遺産の地図の上で繋がって、ひとつのシーンを作り始めている。
結成から『Severance』まで——下から積み上げた8年
結成は2015年、マンチェスター。現在の編成は5人だ。ボーカルがジェイ・ヴァレンタイン(Jay Valentine)、ギターはジャック・メイデン(Jak Maden)とサム・ベイカー(Sam Baker)の2人、ドラムがトム・エイムソン(Tom Aimson)、ベースをリリー・キルコイン(Lily Kilcoyne)が担当する。
2019年8月のデビュー作『River of Lies』はドイツの BDHW Records から出た。クランチなチャグ・リフ、トゥー・ステップ、ギャロップで進む、シンプルで効くハードコアだ。全10曲の9曲目「Tempest」でアコースティック・ギター2本が静かに息継ぎを置き、その直後にクローザー「Cyclone」が最も重い一撃を落としてくる。捨て曲を並べない構成の勘が、この時点でもう出ている。
4年置いた2作目『Severance』(2023年9月22日、MLVLTD)は12曲入りだ。短いハードコア曲の直列の中に、客演を3曲差し込んで呼吸を変えている。「Sweet Dreams」に入るのはランドマークス(LANDMVRKS)のフロ・サルファティ(Florent Salfati)、「Sanctified」ではロウアー・ザン・アトランティス(Lower Than Atlantis)のマイク・デュース(Mike Duce)がシンガロング部分を作る。この一枚でアンダーグラウンドの外まで名前が届いた。
アーム・ダイブと、二人ギターの分業
GUILT TRIP の音を識別する手がかりは、リフの真ん中で唐突に落ちるダイブ音だ。アーミングで音程を地面まで引きずる古典的な技で、古いハードコアの粗さと Korn 以降のグルーヴ感が1本のリフの中に同居する。
2本のギターは均等に弾かない。片方がチャグでリズムの背骨を作り、もう片方が短いリードやダイブで表面を撹乱する。マレヴォレンスが2本のギターをほぼ並走させて壁を作るのと、設計思想が逆になっている。
Roadrunner と『Armour of Angels』(2026.06.05)
2025年9月、バンドは Roadrunner Records と契約した。最初のシングル「Burn」は契約発表と同時に公開されている。UK の中堅メタリック・ハードコア・バンドがメジャー系の大手レーベルへ移る流れの、最先端に GUILT TRIP がいる。
2026年2月11日、予告なしに3曲入り EP『God Forgives』が落ちてきた。新曲「Dirt」「Angel Eyes」に、「Burn」の新しいミックスを足した内容だ。ヴァレンタインは Rock Sound でこの EP をこう説明している。
The songs were written with one thing in mind: ‘Make it better’, and we hope we have hit the mark for every Guilt Trip fan out there.
(曲は一つのことだけを念頭に書いた——「もっと良くしろ」。GUILT TRIP のファン全員に届いていることを願う。)
— ジェイ・ヴァレンタイン(Rock Sound、2026年2月)
3月30日には「No Love Lost」のミュージック・ビデオ(監督ルイジ・シボーナ/Luigi Sibona)が公開された。バンドの言葉によれば「Guilt Trip の良いところを全部、速く容赦のない2分半に詰めた1曲」だ。その尺の中で、チャグのリフが3回切り替わる。
『Armour of Angels』は2026年6月5日にリリースされた。12曲でおよそ34分、収録曲「Resurrected」には P.O.D. のソニー・サンドヴァル(Sonny Sandoval)がゲスト参加する。2000年前後のニュー・メタル世代と、現代の UK メタリック・ハードコアが直接接続する人選で、多くの読者の意表をついてくる組み合わせになった。過去の世代と現在の最前線を繋ぎ直そうとする意志が、3作目のキャスティングにはっきり出ている。
アルバムの真ん中には短いインタールードが1つ置かれ、そこで一度だけ息が抜ける。前後の「Angel Eyes」の踏み込みと「Suffer Me」の掴みかかるようなグルーヴが、その空白のおかげで一段深く刺さる。Kerrang! の評(2026年6月3日)は5点満点の4点で、青写真の書き換えではなく、その完遂だと書いた。ここは同意する。新しい設計図を描いたのではなく、8年かけて描いた設計図の線を、全部濃くなぞってきた。
北米ツアーと、UK/EU ヘッドライン・ラン
2026年3月31日のデトロイト公演から、北米ツアーが走り出した。マレヴォレンスとのコ・ヘッドライン形態で、サポートはチェインバー(Chamber)。4月23日のミルウォーキーまで、17公演を全部埋めて帰ってきた。UK のメタリック・ハードコア2組が並んで米国を縦断する形は、近年では珍しい光景だった。
5月には Slam Dunk Festival(23日ハットフィールド、24日リーズ)にマレヴォレンスとともに出演した。ヘッドライナーは Knocked Loose。アルバム発売の2週間前に、UK 最大級のオーディエンスの前で新曲を叩きつけた形になる。
秋にはバンド史上最大の UK/EU ヘッドライン・ツアーが控える。10月14日のバーミンガム(Birmingham)に始まり、16日ロンドンはエレクトリック・ボールルーム(Electric Ballroom)、18日の地元マンチェスターは New Century Hall。そこから欧州本土へ渡り、11月1日のパリで終わる。サポートに Judiciary、Justice for the Damned、Long Goodbye という、ハードコアとメタルコアの結節点に立つ3組を並べてくる。マンチェスター公演は事実上の凱旋になるはずだ。
聴くべき入口——3作の入り方
初めて GUILT TRIP を聴くなら『Severance』から入るのが一番無理がない。リフのキレ、アルバム単位の構成、ダイブの癖、ジェイ・ヴァレンタインの声の振れ幅、全部がここに出ている。
『River of Lies』は粗削りな初期衝動が前面に出る一枚だ。7年前の北イングランド・ハードコアの空気がそのまま残っていて、シーンの出発点を知るには向く。
そして『Armour of Angels』は、もう聴ける。『Severance』より速く、『Severance』より整理されている。Roadrunner という規模の中で何を選び、何を残したかが、この1枚で見える。汚れたアンプの音は、磨かれずにそのまま持ち込まれた。
マンチェスターの汚れたアンプの音が、ここから世界の流通量に乗っていく。ヘッドフォンを充電して、12曲を頭から浴びるだけでいい。

