歪みを抜いて残るもの——アンプラグドで化けたメタルの名演

アンプラグド メタル ── 歪みを抜いて残るもの——アンプラグドで化けたメタルの名演 プレイリスト
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歪んだギターは鎧みたいなものだ。轟音で覆ってしまえば、その下に何が立っているのかは見えなくなる。曲そのものが強いのか、音量で押し切っているだけなのか、電気を入れたままでは確かめようがない。プラグを抜くと、そこが一気にむき出しになる。痩せ細って消える曲もあれば、歪みが無くなってはじめて芯の太さが伝わる曲もある。アンプラグドで化けたメタルの名演を、ここで何枚かたどってみたい。

アンプラグドは、メタルから歪みと音量を取り去って、曲の芯——メロディと声と構成——だけを残す試みだ。そこで痩せる曲もあれば、電気を抜いてこそ強さがはっきり届く曲もある。後者が、アコースティックで化けた名演になる。

アンプラグドがメタルに何をするのか

アンプラグド メタル——黒い背景に浮かぶアコースティックギター
Photo by Harshveen Kalsi on Unsplash

静かなメタルなら、多くの人がもう一曲そらで言える。メタリカ(Metallica)の「Nothing Else Matters」だ。フロントマンが電話口で四本の開放弦をつまびいているうちに生まれた、と伝わる曲だ。あれは最初から歪みの外にあった。歪んだバンドが音量を落としても重さは消えないと、世代をまたいで教えた一曲だった。

だが本当の試験は、歪みの上に組み上がった曲からプラグを抜いたときに来る。生まれつき静かな曲ではなく、轟音ありきで書かれた曲が、アコースティックでも成立するか。そこを早い時期に大きくやってみせたのがテスラ(Teslaだった。

カリフォルニアの正統派ハードロックバンドだ。1990年7月2日、フィラデルフィアのトロカデロ劇場での一夜を録音し、『Five Man Acoustical Jam』として世に出した。MTVのアンプラグドが定番の儀式になるより前の話になる。ヒット曲と、メンバーが持ち寄ったカバーを、全部アコースティックで組み上げた。看板の「Signs」——ファイヴ・マン・エレクトリカル・バンド(Five Man Electrical Band)のカバー——は全米8位、アルバムはビルボード200で12位まで上がっている。歪みを外した一夜の記録から、全米トップ10のシングルが出てしまった。歪みが無くても客がついてくることを、彼らはずいぶん早く証明した。

🎵 1990年のアコースティック・ライブ盤。歪みを抜いたハードロックの、早すぎた決定打。
『Five Man Acoustical Jam』: Amazon

キッスが化粧を落とした夜

火薬に厚化粧、底の高いブーツ——そういう舞台の仕掛けで膨らんできたバンドが、その全部を外して椅子に座った。キッス(KISSが1995年にニューヨークのスタジオでやったアンプラグドだ。

この夜、オリジナルの4人が久しぶりに同じステージへ揃った。素顔のオリジナル・ラインナップが公の場に出たのは、これが初めてだった。ピーター・クリスが歌う「Beth」が、ドラマーの素の声でそのまま響く。轟音もメイクも無い場所で、バンドの柔らかい側が隠さず出ていた。

客の反応があまりに大きかったせいで、翌1996年、オリジナルの4人での再結成ツアーが動き出す。プラグを抜いた一夜が、離れていた4人をもう一度引き合わせた。アンプラグドがバンドそのものを作り変えた、珍しい例になった。

🎵 1995年収録・1996年発表。素顔の4人がそろった夜の記録。
『MTV Unplugged』: Amazon楽天ブックス

アリス・イン・チェインズ、最後の生身

アンプラグド メタル——ギターのネックと弦を押さえる手のモノクロ写真
Photo by Caio Silva on Unsplash

1996年4月、ブルックリンの古い劇場でのことだ。アリス・イン・チェインズ(Alice in Chainsがアンプラグドのステージに腰を下ろした。グランジともオルタナティブメタルとも呼ばれた、あの重さのバンドだ。人前で演奏するのは2年半ぶりだった。

開幕は「Nutshell」だった。レイン・ステイリーの声は、もうかなり傷んでいた。震えも、息の足りなさも、マイクが残らず拾う。アコースティックは曲を和らげなかった。むしろ、痛みとの距離を縮めた。

この夜、新曲「The Killer Is Me」がはじめて人前で鳴った。「Down in a Hole」は歪みを失ったぶん、沈み込みがかえって深く届く。電気を抜いたことで、曲が抱えていた閉塞がいっそう近くまで来た。ここに並べたなかで、いちばん重い化け方をした演奏だ。

🎬 MTVアンプラグドの公式映像。

“There’s no safety net, so your songs better be pretty good. Boiling it down reveals the heart of the song, without all the bells and whistles, and if it still hits in that environment then you did good.”

セーフティネットが無い。だから曲そのものが良くないと保たない。削ぎ落とせば曲の芯が見えてくる。飾りを全部外して、それでも刺さるなら、やれていたということだ。

— ジェリー・カントレル(Jerry Cantrell)/Kerrang!(2021年)

この3か月後、彼らはキッスの再結成ツアーの前座として4公演を回った。1996年7月3日、カンザスシティ。それがステイリーの立った最後のステージになる。彼は2002年に世を去っている。

🎵 1996年のアンプラグド全編。
『Unplugged』: Amazon

スコーピオンズ、メロディだけが残る

スコーピオンズ(Scorpionsの場合は、試験の中身が少し違う。2001年の『Acoustica』に入っている「Still Loving You」も「Wind of Change」も、もとはバラードだ。歪みで押していた曲ではない。だから問われるのは、電気のパワーを抜いてもメロディだけで成立するかどうかになる。

この盤はリスボンの古い修道院で、2001年2月の三夜をライブ録音したものだ。自分たちのバラードに混じって、クイーン(Queen)の「Love of My Life」やカンサス(Kansas)の「Dust in the Wind」も拾い上げている。声を運ぶのはクラウス・マイネだ。どの曲も、伴奏を木の音に置き換えても輪郭がぼやけない。良いメロディは、伴奏が何であっても通用する。スコーピオンズがここで聴かせるのはそこだ。

🎵 2001年・リスボン録音のアンプラグド盤。
『Acoustica』: Amazon

オーペス、歪みもデスヴォイスも捨てて

アンプラグド メタル——暗がりに置かれた黒と茶のギターのクローズアップ
Photo by Miguel Luis on Unsplash

ここまでは、メタルの曲をアコースティックで弾き直す話だった。オーペス(Opethがやったのは、もっと振り切れている。

スウェーデンのプログレッシブ・デスメタルバンドが、2003年の『Damnation』で、デスヴォイスも歪みも一切使わなかった。クリーンな声、クリーンなギター、たっぷりのメロトロンが鳴る。70年代のプログレ、とりわけキャメル(Camel)あたりの匂いがする。プロデュースはスティーヴン・ウィルソンだ。一夜限りのアコースティック・セットではなく、バンドの看板を全部外したスタジオ作を、一枚まるごと作ってしまった。

それでも軽くならない。「Windowpane」を聴けばわかる。爆音もも無いのに、低く漂う重さは消えていない。前年の『Deliverance』と同じ録音期間に作られた対の一枚で、ミカエル・オーカーフェルトはこの2枚を、録音中に亡くした祖母へ捧げている。デスメタルのバンドが静寂の側へ全部移っても、重さは少しも減っていない。ここに並べたなかで、最も過激なアンプラグドがこれだ。

🎵 2003年。デスメタルバンドが全編クリーンで作り切った一枚。
『Damnation』: Amazon

五者の事情はばらばらだ。早すぎた時期にこれを試した者もいれば、ここから再結成へ転がっていった者もいる。声が傷んでいくのを、そのまま記録してしまった夜もある。共通点は一つで、歪みと音量を外しても曲が成立しているか、そこが剥き出しになる。電気を抜いて残ったものが、その曲の本当の体力だった。ここに挙げた演奏は、それを耳で確かめさせてくれる。

WANDERLOUD
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