原曲を超えたメタル・カバー7選

シーン別プレイリスト
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オリジナルを心底愛しているからこそ、優れたカバーの凄みがわかる。原曲の輪郭はちゃんと残っているのに、鳴っている感情はまるで別物だ——その距離こそがメタル・カバーの肝で、重さや速さよりも解釈の鋭さがものを言う。ここで挙げる7曲は、いずれも「あの曲がこうなるのか」と声が漏れるほど、原曲を超えたと語り継がれてきた。

原曲を超えるメタル・カバーは、編曲の工夫ではなく解釈の勝負で決まる。ここで挙げる7曲は、ヘヴィな音圧と歌で原曲が抱えていた感情を掘り起こしている。

メタル・カバーが原曲を超えるとき

カバーが原曲を超えるのに、「ヘヴィにする」だけでは何も起きない。原曲が抱え込んでいた感情や世界観を、メタルの語彙で読み直せたときに初めて景色が変わる。だから今回は、原曲を踏みつけにせず可能性のほうを押し広げた録音だけを選んでいる。優れたカバーは原曲を消さず、隣に立って共存するものだ。

① DISTURBED「The Sound of Silence」(2015)

1曲目はディスターブド(DISTURBED)。デイヴィッド・ドレイマンが、サイモン&ガーファンクルの名曲に新しい血を通わせた録音だ。1964年の原曲は二本のギターと澄んだハーモニーだけで完結していて、それ以上足す余地などないように聴こえる。ところがドレイマンのバリトンが入ると、同じメロディの奥に怒りと底の深さが現れ、孤独のスケールが一気に膨れ上がる。背後で動くオーケストラの弦は飾りではなく、原曲の輪郭をかえって生々しく浮かび上がらせている。

アルバム『Immortalized』(2015年)に収まったこのカバーは、MVの再生数が10億回を突破した。原曲を書いたポール・サイモン本人が「力強いパフォーマンスだ」とドレイマンへメールを送って讃えたという逸話まで残っている。ビルボードのハード・ロック・デジタル・ソングスでは1位を獲った。原曲を超えたカバーの話になると、メタルを聴く人間もそうでない人間も、まずこの曲の名前を口にする。

🎬 YouTubeで DISTURBED「The Sound of Silence」を観る

10億回再生超え。ポール・サイモン公認のカバーMV。

② METALLICA「Whiskey in the Jar」(1998)

2曲目はメタリカ(METALLICA)。「Whiskey in the Jar」はもともとアイルランドに伝わる民謡で、メタリカが直に下敷きにしたのはシン・リジィ(Thin Lizzy)の1972年版だ。アルバム『Garage Inc.』(1998年)に収録されたこのテイクは、原曲が持つカントリー調の陽気さを捨てずに、ダンサブルなグルーヴごと金属的なリフで太らせている。

その上をカーク・ハメットの流れるようなリードが滑り、ジェームス・ヘットフィールドの声が酒場の語り部の役回りをそのまま引き継ぐ。ライヴでは外せない一曲になり、ストリーミングの再生数ではシン・リジィ版を追い抜いた。今や多くのリスナーが、原曲よりメタリカ版を「本命」として鳴らしている。

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ヨナス・オーカーランド監督、1998年ブルックリン撮影のMV。

③ TYPE O NEGATIVE「Summer Breeze」(1993)

3曲目はタイプ・オー・ネガティヴ(TYPE O NEGATIVE)。原曲はシールズ&クロフツ(Seals & Crofts)が1972年に放った夏の名曲で、それをバンドは丸ごとゴシック・ドゥームへ沈めてしまった。アルバム『Bloody Kisses』(1993年)に入ったこのカバーでは、ピーター・スティールの深いバスバリトンが、原曲の牧歌的な情景を手を引いて別の世界へ連れていく。

ジャスミンの匂う夏の夕暮れ——その情景が、スティールの声に乗ったとたん夜の闇へ落ちていく。メロディ自体は原曲をほぼそのまま使っているからこそ、原曲を知っている耳ほど解釈の落差に驚かされる。速さを足さず、テンポを落としきったことが武器になっていて、重いリフが夏の光をゆっくり闇へ反転させていく。原曲の輪郭が見えるぶん、その反転はいっそう静かに効く。

④ FEAR FACTORY「Cars」(1998)

4曲目はフィアー・ファクトリー(FEAR FACTORY)。原曲はゲイリー・ニューマン(Gary Numan)が1979年に放ったニュー・ウェイヴのクラシックで、バンドはそれをインダストリアル・メタルへ組み直した。アルバム『Obsolete』(1998年)のボーナス曲という扱いながら、原曲が抱えていた機械的な冷たさと疎外感を、バートン・C・ベルの叫びと精密な刻みリフでいっそう大きく増幅させている。

おかげで「機械に囲まれた孤独」が、原曲よりも生身に近い手触りで迫ってくる。皮肉なのは、これだけ冷たい音なのにカバー自体はやたらキャッチーで、シンセポップの旨味をヘヴィな器のまま保存したことが、ロック・ラジオでの大量オンエアにつながった点だ。後年にはゲイリー・ニューマン本人がステージで共演しているほど、両者の関係は穏やかなままだ。

⑤ MARILYN MANSON「Sweet Dreams (Are Made of This)」(1995)

5曲目はマリリン・マンソン(MARILYN MANSON)。ユーリズミクス(Eurythmics)が1983年に作った原曲を、マンソンは悪夢の姿で起こし直した。インダストリアル・グランジへの大胆な置き換えだ。EP『Smells Like Children』(1995年)に収められたこのカバーは、原曲のシンセポップが持っていたクールさを根こそぎ解体し、歪んだギターと不穏なMVでまるで違う温度を作り出した。

これが世界中の注目を一気に集め、バンドをメジャーシーンへ押し上げた。何より面白いのは、その後に起きた逆転だ。多くのリスナーは、まずこのカバーで曲を知る。原曲のほうを後から知る、という順番が定着した。カバーが原曲の骨格の強さを証明すると同時に、マンソンの解釈がそれ単体で立っていることまで示してしまった。

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1995年の衝撃作。このカバーがバンドを全米の注目の的にした。

⑥ JUDAS PRIEST「The Green Manalishi (With the Two Prong Crown)」(1979)

6曲目はジューダス・プリースト(JUDAS PRIEST)。原曲はフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)が1970年に出した、ピーター・グリーンによるプロト・メタル的なシングルだ。芽の状態だったその曲を、プリーストはアルバム『Killing Machine』(1979年)の録音で完成形まで引き上げた。

ロブ・ハルフォードの金属質な声が、原曲に潜んでいた悪夢的なリフをいっそう研ぎ澄ます。コミュニティでは「原曲の意図にいちばん忠実なカバーだ」と言われ続けてきた。プリーストのライヴでも外せない一曲になり、バンドを代表する演目として根を張っている。原曲のほうが「本当はこうなりたかった」と言いたげに聴こえる、希有な録音だ。

⑦ FIVE FINGER DEATH PUNCH「Bad Company」(2009)

最後はファイヴ・フィンガー・デス・パンチ(FIVE FINGER DEATH PUNCH)。原曲はバッド・カンパニー(Bad Company)が1974年に発表した同名曲で、それを重厚なグルーヴ・メタルとして鳴らし直した。アルバム『War Is the Answer』(2009年)に収録されたこのカバーは、原曲を知らない世代にまで広く届き、ロック・ラジオのヘヴィ・ローテーションに食い込んだ。

軸になるのはアイヴァン・ムーディの声だ。原曲でポール・ロジャースが見せた渋みとは別の場所に立っていて、代わりに剥き出しの力強さで押してくる。「アウトロー的な生き様」を、原曲よりも直截に体現してみせる。このカバーはミリタリー層から強く支持され、バンドが軍人向けの慈善活動に踏み出すきっかけのひとつにもなった。

カバーが原曲を超える瞬間には、いつも深い解釈の力が働いている。この7曲が見せてくれるのは、ヘヴィメタルというジャンルが持つ懐の広さだ。原曲の魂を捨てずに受け取り、そこへ新しい意味を流し込む——その営みのいちばん美しい姿が、ここに7つ並んでいる。

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