クラシックの管弦楽と、歪んだギターの轟音。本来なら同じ舞台に並ばないはずの二つが、一枚のアルバムの中で同時に鳴っていた。初めて耳にしたとき、私は曲の途中で手を止めた。分厚いコーラスが空気を満たし、その真下でドラムが地面を叩く。この音楽がシンフォニックメタルと呼ばれていると知ったのは、ずいぶん後のことだった。このシンフォニックメタル入門では、歌劇めいた歌声と金属の轟音がいつ、どこで同居しはじめたのかを、音そのものから辿る。
オペラ唱法と轟音が出会うまで
シンフォニックメタルの設計図そのものは込み入っていない。ヘヴィメタルの重さと速さに、クラシックの管弦楽と合唱を重ねる。キーボードがストリングスの役割を担い、曲の骨格をオーケストラの語法で組み上げる。パワーメタルの旋律性と、ゴシックメタルの暗い空気が、その土台になっている。
生まれたのは1990年代の北欧と西欧だった。フィンランド、オランダ、スウェーデン。冷たく湿った気候を抱える国々から、判で押したように似た衝動が噴き出した。クラシックの荘厳さを、メタルの音量で鳴らしたい。その欲望が複数の場所で同時に芽吹いている。
美しい声と獣の声
この音楽を象徴するのが、対になった二つの声だ。ひとつは訓練されたソプラノ。オペラの発声で、高く澄んだ旋律を歌い上げる。もうひとつはデスメタル由来のグロウルで、喉を潰したような咆哮がその美しさに影を落とす。
きれいな声と汚い声を一曲の中で衝突させ、緊張を生む——英語圏で美女と野獣と呼ばれる手法だ。すべてのバンドが両方を使うわけではない。ソプラノ一本で押し切る者もいれば、咆哮を主役に据える者もいる。組み合わせの幅が、このジャンルの懐の深さになっている。
セリオン——管弦楽へ振り切った起点
起点を一組だけ挙げるなら、セリオン(Therion)になる。1987年にスウェーデンで結成された。中心にいるのはクリストファー・ヨンソン。バンド名はケルティック・フロスト(Celtic Frost)の作品『To Mega Therion』に由来している。出発点は混沌としたデスメタルだった。
その音は年を追うごとに変質していく。1995年の『Lepaca Kliffoth』で管弦楽の気配が濃くなり、翌1996年の『Theli』でとうとう振り切れた。本物の合唱団とオーケストラをメタルの中心に据えた一枚で、デスメタルの残響はもう脇へ退いている。重い低音の上に、教会音楽めいた声が幾重にも積み上がっていく。
セリオンが証明したのは、メタルが管弦楽を装飾ではなく主役として扱えるという事実だった。後続のバンドが歩く道を、この音が先に踏み固めている。
ナイトウィッシュ——ターヤのソプラノが描いた像
セリオンが扉を押した翌年、フィンランドからナイトウィッシュ(Nightwish)が現れた。1996年、キーボードと作曲を担うトゥオマス・ホロパイネンが中心になって結成している。最初の名刺代わりになったのが、ターヤ・トゥルネンのソプラノだった。
クラシックの訓練を受けた彼女の声は、激しいギターリフの上を澄み切ったまま滑っていく。1998年の『Oceanborn』で、その均衡が一気に世界へ届いた。2000年の『Wishmaster』がそれを継ぐ。湿った叙情と疾走するメタルが、彼女の声を芯にして溶け合っていた。
ターヤは2005年にバンドを去る。彼女が残した初期の音は、シンフォニックメタルにおける女性ソプラノの像をほぼ決定づけた。後の世代の歌い手は、好むと好まざるとにかかわらず、この声を一度は通過することになる。下の映像は、彼女が在籍した時期の代表曲のひとつだ。
オランダからの並行発生——ウィズイン・テンプテーションとエピカ
同じ衝動がオランダでも形になっていた。ウィズイン・テンプテーション(Within Temptation)は1996年、歌い手のシャロン・デン・アデルとギターのロベルト・ウェスターホルトが結成した。デビュー作『Enter』はゴシックメタル寄りの暗い質感を持っている。
転機は2000年の『Mother Earth』だった。シングル「Ice Queen」が国境を越え、オランダのチャートでも上位に届く。シャロンの伸びやかな声と、壮麗なアレンジが噛み合った瞬間だ。閉じたゴシックの暗がりから、開けた場所へ音が抜け出していった。
もう一組、エピカ(Epica)も同じ国から出てきた。2002年、マーク・ヤンセンがアフター・フォーエヴァー(After Forever)を離れて始めた楽団だ。彼のグロウルと、シモーネ・シモンズのソプラノが正面からぶつかる。2003年のデビュー作『The Phantom Agony』で、合唱と管弦楽を惜しみなく盛り込んだ重厚な様式を提示した。
別々の国で同時に起きたこれらの動きが、振り返れば一つのジャンルの骨格を作っていた。誰かが旗を振って号令をかけたわけではなく、似た衝動が各地で噴き出した結果だった。
シンフォニックメタル入門、どこから聴くか
では、どこから入ればいいのか。私の答えは声から選ぶことだ。澄んだソプラノに惹かれるなら、ナイトウィッシュの『Oceanborn』。声と咆哮の衝突に興味が向くなら、エピカの『The Phantom Agony』。歌よりも管弦楽そのものへ浸りたいなら、セリオンの『Theli』が深い場所まで連れていってくれる。
とっつきにくさを感じるなら、シングル曲から触れる手もある。ウィズイン・テンプテーションの「Ice Queen」は、メタルに馴染みのない耳にも届く間口の広さを持っている。そこで何かが引っかかったら、アルバムへ進めばいい。引っかからなければ、別の声を探せばいいだけのことだ。
歌劇と轟音は、もともと相容れないものとして語られてきた。片方は格式を背負い、片方は反抗を鳴らす。その二つを一つの音に溶かしたとき、どちらにもなかった巨大さが生まれた。30年近く前に北欧と西欧で起きたこの融合は、今も新しい歌い手と作曲家の手で更新され続けている。気になった一枚があるなら、音量を上げて向き合うのがいちばん早い。鳴っている音は、どんな説明よりも先に答えを渡してくる。


