LOSTPROPHETSという抹消——シーンはあの名前をどう葬ったのか

LOSTPROPHETS 抹消 ── LOSTPROPHETSという抹消——シーンはあの名前をどう葬ったのか メタル事件簿
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2013年11月29日、イギリスの大手チェーンHMVが全国140店舗の棚からロストプロフェッツ(Lostprophets)のCDを引き上げた。オンラインストアからも同時に消えている。LOSTPROPHETSという名前の抹消は、この日に始まったと語られてきた。実際に起きた出来事はもう少し込み入っていて、いまも終わっていない。

ロストプロフェッツの音源は、放送と実店舗からは外されたものの、配信サービスからは削除されなかった。この名前を扱わないという判断は業界の側で完結せず、聴き手ひとりひとりの手元に降りてきた。だから抹消には公式な終わりの日付が存在しない。

棚から消えた日に、消えなかったもの

経緯を事実だけで押さえておく。フロントマンだったイアン・ワトキンス(Ian Watkins)は2012年12月に起訴され、2013年11月26日、児童に対する13件の性犯罪について有罪を認めた。判決は同年12月18日にカーディフ刑事法院で下りた。29年の実刑に6年の延長監視期間が加わり、拘束の枠は計35年になった。

被害を受けた子どもたちが負ったものの重さは、この記事が測れる範囲を超えている。ここで扱う範囲は、そのあとに「名前」へ起きた処理に限られる。

処理そのものは速かった。バンドは有罪答弁より前、2013年10月1日に解散を発表している。11月29日にHMVが在庫を下げ、BBCは全ラジオ局とテレビ番組のプレイリストから同バンドの曲を外した。国営放送で電波に乗る可能性は、数日で消えた。

ところが、その翌日にDigital Music Newsが伝えた状況は違っている。iTunes、Spotify、Amazon、Pandora、VEVO、YouTube——主要な配信サービスのどこにも、カタログはそのまま残っていた。棚を空にした小売の隣で、配信事業者は何も動かさなかった。すべて同じ週の出来事になる。

LOSTPROPHETSの抹消——誰も立たないステージに残されたドラムセット
Photo by Ivan Lom on Unsplash

LOSTPROPHETSの抹消を実行したのは誰だったのか

制度が動いた範囲は、振り返るとかなり狭い。放送局は流さない、小売は置かない。そこで止まった。曲そのものは当時もその後も、検索すれば出てくる場所に置かれ続けている。

すると、聴くか聴かないかの判断は誰の手に残るか。レーベルでも配信事業者でもない。再生ボタンを押す側に、まるごと降りてくる。プレイリストから外すのも、外さずに置いておくのも、そこから先は私的な選択になった。

その選択が、同じ方向へ静かに揃っていった。

企業の決定には撤回の手続きがある。声明を出し、方針を変え、日付を打てる。分散した無数の私的判断には、その窓口がない。「解禁」を宣言できる主体がどこにもないまま、10年以上が過ぎた。

だから「シーンが葬った」という説明は、主語が大きすぎる。手を下したのはシーンという集合ではない。その中にいた一人ひとりだった。集合の決定なら記録が残るが、個人の削除には記録も撤回もない。名前は消えたのではなく、呼べなくなったまま置かれている。

巻き添えになった5人の10年

封じられた名前の中には、6人分の時間が入っている。1997年にウェールズのポンティプリッドで結成されている。ハードコアの速度にヒップホップの跳ね方とメタルの刻みを混ぜた音で、2000年代前半のイギリスで大きな数字を動かした。

2004年の『Start Something』はUKアルバムチャート4位、全世界で250万枚を超えている。2006年の『Liberation Transmission』ではUKアルバムチャートの1位を取った。日本にも届いていて、2004年のサマーソニックのステージにも立っている。

LOSTPROPHETSの抹消——モノクロのホールを歩いていく人の群れ
Photo by Mark Thompson on Unsplash

ワトキンスを除く5人が、その音を実際に鳴らしていた。ギター2本、ベース、キーボード、ドラム。10年以上ツアーを回して録音を重ねたのは、この5人の腕である。

2013年10月1日の声明で、彼らは「これ以上ロストプロフェッツとして音楽を作ることも、演奏することもできない」と書いた。署名にワトキンスの名前はない。

そこから先が厳しい。曲を再生すれば、いちばん前で聴こえてくるのはあの声だ。演奏がどれだけ5人のものでも、上に乗っているものを剥がせない。名前を封じる判断は、5人の10年を同時に沈めた。

「お前たちは何も悪くない」——ノー・デボーションが引き受けたもの

2014年、サーズデイ(Thursday)のボーカル、ジェフ・リックリー(Geoff Rickly)が、その5人と新しいバンドを始めた。名前はノー・デボーション(No Devotion)。

制作の途中、ベーシストがリックリーに逃げ道を示している。あなたには評判があるのだから抜けてもいい、恨まない、と。返ってきた言葉が Alternative Press のインタビューに残っている。

“You guys did nothing wrong. If I have a good reputation and I don’t use it to help out good people, then what fucking good is that?”
(お前たちは何も悪いことをしていない。いい評判を持っていて、それをまともな人間を助けるために使わないなら、そんなもの何の役に立つんだ)
— ジェフ・リックリー(Alternative Press/2014年)

周囲には止める声があった。リックリー自身が同じインタビューで、残ったメンバーが「触れてはいけない」側に置かれていたと認めている。抹消の範囲は、犯罪と無関係の5人にまで及んでいた。

デビュー作『Permanence』は2015年9月25日に出た。デイヴ・フリッドマン(Dave Fridmann)のプロデュースで、シンセと残響が前に出る。ポストパンクとニューウェイブの側へ大きく振れていて、前のバンドの快活さを探すと空振りする。この一枚は2016年のKerrang!年間アルバム賞を受けた。

🎵 音数は多いのに、真ん中が空いている。声の入る場所をあらかじめ空けてある録り方で、通して聴くと、彼らが別の場所へ移らざるを得なかった理由が音の側から見えてくる。
『Permanence』: Amazon

最初に世に出た音源は、2014年7月1日のシングル「Stay」だった。

🎬 前のバンドの跳ねる感じを期待して押すと、最初の数十秒でその期待が外れる。ギターは前へ出ず、音像の奥で鳴っている。

2016年、リックリーのレーベル Collect Records が畳まれてバンドは止まり、2022年9月16日の『No Oblivion』で戻ってきたときには編成が3人になっていた。新しい名前を作る作業は、失ったものを取り返すのとは違う。それでも、自分たちの演奏を呼べる場所へ移し替えるところまでは、彼らの手で届いた。

終わりの日付が来ないまま

2025年10月11日、ワトキンスはウェイクフィールド刑務所で刺され、48歳で死亡した。2人が殺人の罪で起訴されている。

LOSTPROPHETSの抹消——窓の割れた廃屋に散らばる瓦礫
Photo by Mads Eneqvist on Unsplash

その死は、この件に区切りをつけていない。放送は戻らず、棚も戻らず、配信は12年前と同じように置かれたままになっている。被害者にとって何かが解決したわけでもない。

はっきりしたことが一つある。名前を口に出しにくい状態が続く理由は、加害者本人の生死と関係なく残る。判断は最初から個人に配られていて、配り終えた人がいない以上、回収する人もいない。

シーンが実行したのは削除ではなく、発語の停止だった。カタログは残り、聴くかどうかの判断だけが個人に配られたまま宙に浮いている。名前を呼べる日を決める権限を、いまも誰も持っていない。

もし2000年代のあの音がまだ手元に残っているなら、次に再生するものとして『Permanence』を置いてもいい。同じ手が鳴らした音が、呼んでも誰も困らない名前の下に並んでいる。それが12年かけて彼らが取り戻した唯一のものだった。

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