SYSTEM OF A DOWN が20年新作を出さない理由——巨大バンドが止まったままの内側

SYSTEM OF A DOWN 20年 ── SYSTEM OF A DOWN が20年新作を出さない理由——巨大バンドが止まったままの内側 バンド・ストーリー
この記事は約6分で読めます。

2005年11月、SYSTEM OF A DOWN(システム・オブ・ア・ダウン、以下 SOAD)の5作目『Hypnotize』が世に出た日のことを覚えている人は、それなりにいるはずだ。半年前にリリースされた『Mezmerize』との二枚連作で、彼らはひとつの頂点に到達した。そこから20年、新しいスタジオ・アルバムは出ていない。SYSTEM OF A DOWN は20年、ほぼ「新作なし」のまま動き続けている。

SYSTEM OF A DOWN は2005年の『Mezmerize / Hypnotize』以降、20年スタジオ・アルバムを発表していない。創作の方向性をめぐるサージ・タンキアンダロン・マラキアンの公開対立、2020年の二曲限定シングル、2025年から再加速した大規模スタジアム・ツアー——「新作のない巨大バンド」が成立している内側の事情を、時系列で整理する。

2005年の二部作で、何が完結してしまったのか

『Mezmerize』は2005年5月17日リリースの4作目、『Hypnotize』は同年11月22日リリースの5作目で、半年差で世に出た。プロデューサーはリック・ルービン(Rick Rubin)、二枚連続コンセプト自体が当時の業界では珍しい賭けだった。商業的にはどちらも全米1位を獲得し、批評の側でも代表作としての位置づけが固まっている。

ここで一度走り切ってしまった感覚は、メンバー自身の口からも何度も語られてきた。バンドは2006年に「無期限休止」へ入り、2011年から再結成ツアーを断続的に行いながらも、新譜は出ないまま今日へ至る。

SYSTEM OF A DOWN 20年——シルエットで浮かぶコンサート会場の遠景
Photo by Sebastian Ervi on Unsplash

2018年、対立が「公の場」へ出た夏

新作が出ない理由を、メンバーの誰かが秘密にしてきたわけではない。2018年夏、ダロン・マラキアン(Daron Malakian)が英 Kerrang! のインタビューで内情を具体的に語ったことで、対立が一気に表へ晒された。彼の発言を要約すると、12曲以上を書いた、しかしサージ・タンキアン(Serj Tankian)が新作レコーディングへ乗ってこない、自分には彼を説得する方法が分からない、という内容だった。

サージは沈黙しなかった。彼自身の声明で応じている。「創作の方向性が違う」という、どのバンドにもある説明では片づかない深さがあった。ダロンは「SYSTEM のアルバムには作り方というものがあり、自分たちはその作り方でやりたい。サージはそれを別の形でやりたいと考えている」と語っている。サージはダロンを「自分の音楽に対して命がけで、その分だけ脆い人」と評し、その温度差こそ創作差の核なのだと位置づけた。

ベースのシャヴォ・オダジアン(Shavo Odadjian)は「古い諍いを引用が増幅した結果に過ぎない」と火消しに回ったが、4人がスタジオで一枚分の合意を作れていない事実は、その後も隠せなくなった。

2020年、二曲だけ世へ出た「特例」

2020年11月6日、SOAD は15年ぶりに新録音源を発表する。『Protect the Land』と『Genocidal Humanoidz』——アルバムではなく、二曲限定のダブルA面シングルだった。背景は第二次ナゴルノ・カラバフ戦争で、アルメニア系米国人である4人が、祖父母の故郷の窮状に対し動いた結果である。

音そのものよりも、運用の仕方が「20年問題」の輪郭を逆に浮かび上がらせる。プロデュースはリック・ルービンではなく、ダロン自身。リリースに伴ってアルメニア基金(Armenia Fund)へ60万ドル超が寄付された。アルバム制作の合意は依然として無いのに、特例的な目的が立てば4人がスタジオで音を完成させること自体は可能なまま——それが2020年の二曲が示した事実だ。

「新作はないがライブは大きくなる」、2025年からの再加速

2017年以降、SOAD のライブは年に1〜2公演という極小ペースで維持されてきた。風向きが変わったのは2025年である。8月27日のメットライフ・スタジアム(ニュージャージー)から、彼らは北米最大規模のスタジアム・ツアーへ踏み出した。共演はKORN(コーン)のメットライフ2公演、AVENGED SEVENFOLD(アヴェンジド・セヴンフォールド)のシカゴ・ソルジャー・フィールド2公演、DEFTONES(デフトーンズ)のトロント・ロジャーズ・スタジアム2公演という大舞台が組まれた。同世代のニュー・メタル〜モダン・ロックを横断する顔ぶれである。

SYSTEM OF A DOWN 20年——夜の屋外ステージと身を寄せ合う観客
Photo by Robert Bye on Unsplash

2026年も止まらず、UK・欧州・メキシコシティを含む大規模ツアーが計画されている。ラスベガスのSick New World 2026のヘッドライナーにも、サージがファンの前で言及していた。彼の表現を借りれば「20年間ほぼ活動していなかったバンドに、世代を超えた支持が集まるのは奇跡的だ」となる。新作は出ないのに、ライブだけが世代を更新して大きくなっていく。SOAD が抱えるねじれは、ここで完成形へ近づいている。

4人がそれぞれの「外側」で出している答え

新作合意が無いままでも、メンバー個々の創作は止まっていない。ダロン・マラキアンは Scars on Broadway(スカーズ・オン・ブロードウェイ)名義で活動を続け、2025年7月18日(彼の50歳の誕生日)に3作目『Addicted to the Violence』をリリースした。10曲36分、ほぼ全パートをダロン自身が演奏している。先行曲「Killing Spree」のビデオには、SOAD で形にできなかった重さがそのまま乗っている。

サージ・タンキアンも止まっていない。2024年9月にソロEP『Foundations』、2025年10月24日にソロ・アルバム『Covers, Collaborations & Collages』をリリースしている。自伝『Down With The System』(Hachette Books)も2024年5月に出版された。EP『Foundations』収録の「A.F. Day」を本人が「SYSTEM の初期に録音したかった曲」と語っており、行き場を失った楽曲が個人名義へ流れている事実を、サージは隠そうとしていない。

SYSTEM OF A DOWN 20年——暗い部屋でギターを抱える人物
Photo by Miller James on Unsplash

シャヴォ・オダジアンは2024年に Seven Hours After Violet(セヴン・アワーズ・アフター・ヴァイオレット)を始動。ドラムのジョン・ドルマヤン(John Dolmayan)はインタビューで新作実現の道筋を繰り返し語ってきた。4人とも「SOAD としては出せないもの」を、それぞれ別の場所で実際に出してしまっている。合意の不在と同じだけ、この事実が「新作の不可能」を内側から固めている。

SYSTEM OF A DOWN の20年沈黙、その内側をどう読むか

SOAD の20年沈黙の正体は、単純な仲違いではない。アルバムという形式に対し、サージとダロンが異なる前提を持っており、その差は2018年の公開発言以降も埋まっていない。同じ期間に、ライブで一緒に立つこと、特例的な録音を行うこと、それぞれの場所で音を出し続けることは、4人とも続けている。「動けない」のではなく「アルバムだけは作らない、あるいは作れない」という、ほかのバンドにあまり前例のない均衡が20年続いてきた。

2026年、Sick New World のヘッドライナーへ立つ姿を、新作の予兆として読み解きたくなる気持ちは分かる。彼らの2020年・2025年の動き方を順番に見ていけば、6作目はファンが期待するタイミングでは届かないかもしれない。届くとしても、それは「SOAD のアルバム」というよりは、別の特例として現れる可能性が高い。SYSTEM OF A DOWN の現在地は、新譜の有無だけでは測れない場所まで来ている。

『Hypnotize』を20年後に聴き直すと、当時とは違う響き方をする。メンバーは個々の名義で音楽を更新し続けてきた。ステージへも戻り、2020年には特例として2曲だけ録音した。アルバム1枚を全員で完成させる、という形式だけが、その20年でずっと止まったまま今に至っている。

タイトルとURLをコピーしました