スピーカーから出てきた最初の30秒で、ニューメタル・リバイバルが「懐古」ではなくなった瞬間が掴める。SWOLLEN TEETH のシングル「Medicine」のリフがダウンチューニングで胸の中央を潰し、ターンテーブルのスクラッチが歪みのなかで悲鳴をあげる。20年前の語彙で組み立てられているのに、出てくる音はノスタルジーではない。
SWOLLEN TEETH——若手の新譜が「証拠」になった
スウォレン・ティース(Swollen Teeth)は、ボストン発の覆面ニューメタル・バンドだ。メガ(Megaa)がヴォーカルとターンテーブル、サン(Sun)がベース、スカッチ(Skutch)がドラム、HOG がギターを担当する。素性を伏せ、ステージにはゾンビのマスクと病院着で立つ——ヴィジュアルの系譜は明らかにスリップノット(Slipknot)に繋がっている。
驚くべきはプロデューサー陣だ。デビュー作『Ask Nothing』(2025年9月5日リリース)を共同プロデュースしたのは、コーン(Korn)やスリップノットを手がけたロス・ロビンソン(Ross Robinson)と、スリップノットの DJ シド・ウィルソン(Sid Wilson)。所属レーベルの Blowed Out Records は、ロス・ロビンソンとビル・アームストロング(Bill Armstrong)、ラッパーのゴーステメイン(Ghostemane)が共同で設立した新興レーベルで、スウォレン・ティースは第1号アーティストとして契約した。
ニューメタル専門メディア The Nu Metal Agenda は2025年末の総括で「2025年は若手の真っ当な新しい波が初めて来た年だ」と書き、その筆頭としてスウォレン・ティースを名指しした。評は「リバイバル期に登場した最初の、本当にメタルな新人バンド」というものだった。
シングル「Medicine」「Family」「Foster」「Four Wars」を続けて投下し、Biohazard・Onyx・Bayway とのDivided We Fall ツアーにも参加した1年で、覆面新人ながら一気に頭角を現した。ターンテーブルとリフが絡み、節とスクリームを跨ぐヴォーカルが乗り、ロス・ロビンソンの太いドライ・サウンドが土台を組む——20年前のニューメタルの装置で、明らかに2025年の音が鳴っている。
POPPY と JORDAN FISH——ポップ側からも越境が来た
ポピー(Poppy)は YouTube 発の歌うアンドロイド的キャラクターから出発し、ポップとメタルを行き来しながらキャリアを伸ばしてきた歌手だ。その彼女がニューメタル隣接の重音域へ本格的に踏み込んだのが、2024年の『Negative Spaces』と、2026年1月23日に Sumerian Records からリリースされた『Empty Hands』になる。
両作の鍵を握るのが、元ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Bring Me the Horizon)のキーボーディスト、ジョーダン・フィッシュ(Jordan Fish)の存在だ。ブリング・ミーをメタルコア・ポップの巨大化へ実質的に設計した人物が、脱退後はプロデューサーとしてポピー作品を全面サポートに回った格好で、ブリング・ミーで作り上げた音圧設計とリフの語彙がポピー作品にもそのまま持ち込まれている。
『Empty Hands』はメタルコア/オルタナティヴ・メタル/インダストリアル・メタル/ニューメタルにまたがり、Metacritic で81点の “universal acclaim”(普遍的賞賛)を獲得した。先行シングル「Bruised Sky」を Consequence は “Poppy at Her Most Metal”(最もメタルなポピー)と評している。
ポップ畑の歌手がニューメタル隣接の重音域へ越境する動きは、シーンの裾野を別の入口から広げる出来事になっている。聴き慣れたシーンの中心では起こり得なかった音色が、別の出自を持つ歌手の身体を通して2025〜2026年に鳴っている。
古参組の最大化——LIMP BIZKIT、KORN、DEFTONES が同じ年に動いた
新人だけでこの年が「元年」と呼ばれているわけではない。古参のラインも同じ年に最大化したからこそ、復権が現在進行形として動いたと言える。
リンプ・ビズキット(Limp Bizkit)の新曲「Making Love to Morgan Wallen」が2025年9月、Billboard の Hot Hard Rock Songs を含む複数のチャートで首位を獲得した。バンドにとっては25年ぶりのチャート1位で、同じ年の5月にはスリープ・トークン(Sleep Token)の『Even in Arcadia』が Billboard 200 で総合1位デビューを記録している——重音シーンがアメリカの大手チャートで上位に並んだ1年になった。
ライブ側ではコーン(Korn)が10年以上ぶりとなる英国・アイルランド・欧州ツアー(19公演・2026年10月〜11月)を発表し、共演にはアーキテクツ(Architects)とユース・コード(Youth Code)を据えた。2026〜2027年にかけては、リンキン・パーク(Linkin Park)、リンプ・ビズキット、システム・オブ・ア・ダウン(System of a Down)、パパ・ローチ(Papa Roach)、デフトーンズ(Deftones)が大型フェスとアリーナをまわるブッキングも組まれている。
「過去のバンドが過去の曲で郷愁を売る再結成ツアー」と片付けられない規模で、古参組が現役として動いている。チャートで結果を出し、若いリスナーが新譜と並列で同じ年に聴く——2025年は、古参が現在進行として並んだ1年だった。
世代を縦に貫いた一年——なぜ今回のニューメタル・リバイバルは本物なのか
過去にもニューメタル・リバイバルは何度か語られてきた。2010年代後半に Of Mice and Men・Emmure らがそれっぽい音を出した時期もあったし、2023年には Google 検索の「nu-metal」が2004年を超えて20年で最高のボリュームを記録している。だが「現在進行のシーン」として動き出したのは2025年が最初だ。
米 Loudwire は今年「Z 世代がニューメタル・リバイバルを連れてきた」と特集を組み、TikTok で短尺映像が拡散され、デフトーンズの古いトラックが10〜20代の入口になっていく現象を整理している。入口から入った若い層が、スウォレン・ティースの新譜をコーンと並べて再生する——この縦の重なりが、これまでのリバイバル談義との決定的な違いになっている。
古参のリスナーには Linkin Park・Limp Bizkit・Korn が「あの頃の現役」として戻ってきた1年であり、若いリスナーには Swollen Teeth と Poppy が「最初に夢中になったメタル」になりつつある。同じシーンを別の入口から両世代が同時に聴き始めた——2025年が「復権元年」と呼ばれる理由の核は、この縦の重なりにある。
「あの頃は良かった」では閉じない動きが、もう続いている。2026年の『Empty Hands』を初めて聴く新規リスナーと、『Ask Nothing』でロス・ロビンソンのドラム・サウンドに反応するベテラン・リスナーが、同じ年の新譜リストを並べて見る。


