2017年1月20日、ロサンゼルスのTeragram Ballroom。12年ぶりに4人が同じステージに立った——オーディオスレイヴ(AUDIOSLAVE)全3作の中から「Cochise」「Like a Stone」「Show Me How to Live」、デビューアルバムの3曲を演奏した。再結成が告知されたのは、その3日前だった。
その118日後、クリス・コーネル(Chris Cornell)はデトロイトのホテルの一室で息を引き取る。
再結成から118日——2017年1月20日のステージ
Anti-Inaugural Ballは、ロサンゼルスのTeragram Ballroomで開かれた。ホストはトム・モレロ(Tom Morello)らのプロフェッツ・オブ・レイジ(Prophets of Rage)で、ドナルド・トランプの大統領就任式が行われた当日の夜に組まれた抗議イベントだった。ヴィック・メンサ(Vic Mensa)やジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)も名を連ねる一夜の中で、AUDIOSLAVEのオリジナルラインアップが12年ぶりに同じ場所へ並ぶ。デビューアルバム『Audioslave』(2002)から3曲。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(RAGE AGAINST THE MACHINE)のリズム隊に、コーネルの声が再び乗る。現地のライブ評は、事前の練習がサウンドチェック1回きりだったこと、それでも4人が崩れなかったこと、コーネルがステージダイブまで見せたことを伝えている。観客の反応を撮った断片映像も今なお残っていて、最初のリフが落ちた直後の歓声で会場の温度が察せられる。
その夜が、モレロとコーネルの最後の会話になった。
“Just that night, the last thing Chris said to me was, ‘I had a great time, let’s do this again, just let me know when,’ and we started talking about maybe doing a similar thing, where maybe it would be a Prophets of Rage show, and then we would drop an Audioslave set into the middle of it, and we’d have a ball.”
「あの夜、クリスが最後に俺に言ったのは『すごく楽しかった、もう一度やろう、いつでも声をかけてくれ』だった。それで二人で話し始めた——プロフェッツ・オブ・レイジの公演をやって、その真ん中にAUDIOSLAVEのセットを落とし込む。最高だろうって」
— Tom Morello / Musicfeeds インタビュー(2017年)
その計画は、二人の頭の中にしかないまま消えた。5月18日、コーネルはミシガン州デトロイトのMGM Grand 1136号室で発見される。前夜の5月17日にFox Theatreで行われたサウンドガーデン(SOUNDGARDEN)の公演が、彼の最後のステージになった。享年52。死因は自殺と公式に判定されている。AUDIOSLAVEのオリジナルラインアップが鳴らした音は、あの1月20日の3曲が最後になる。
AUDIOSLAVE全3作の連続性——『Audioslave』『Out of Exile』『Revelations』
3枚のアルバムを順に聴き返すと、コーネルがバンドの中で何をしていたかが見えてくる。
『Audioslave』(2002年11月)。1作目は完成までに一度、空中分解しかけている。2002年3月にオズフェスト出演を発表した直後、コーネルはバンドを離れた。マネジメント周りの問題が片付いて戻るまで6週間かかっている。その裂け目を抱えたまま出てきた音は、SOUNDGARDENでもRAGE AGAINST THE MACHINEでもない、4人の合成でしか鳴らない種類のものだった。コーネルの声は2作目以降より直線的で、初対面の4人がぶつかり合う緊張が録音にそのまま残る。「Cochise」のリフがイントロから体を持っていく感触は、この1枚でしか聴けない。
『Out of Exile』(2005年5月)。2作目で4人のバランスは整理され、作品は全米アルバムチャートの首位に立った。コーネルの声は1作目より中音域に厚みが乗り、モレロのギターはエフェクト中心の咆哮から、リフでメロディを支える役割へ動いていく。実験の熱ではなく、バンドとして組み上がった手応えが前に出る1枚だ。
『Revelations』(2006年9月)。3作目には60〜70年代のソウルとファンクが流れ込む。モレロはこの音を「レッド・ツェッペリンとアース・ウィンド・アンド・ファイアーが出会ったような音」と語り、コーネルも自分のヴォーカルを「70年代のファンクとR&Bの風味」と説明していた。「Original Fire」のグルーヴはRAGEともSOUNDGARDENとも違う質感で、4人が次の段階へ足を踏み出そうとしていた跡が録音に残る。
リリースが2002・2005・2006と詰まっており、6年で3枚という密度になる。スーパーグループにありがちな1枚で立ち消えるパターンを避け、3枚分の世界を作り切ったところに、このバンドの実体がある。
クリス・コーネルが背負った声——AUDIOSLAVEの中で鳴っていた重量
コーネルの声には、SOUNDGARDENで鍛えた低音域の重量と、テンプル・オブ・ザ・ドッグ(TEMPLE OF THE DOG)で見せた感情の振幅が同居していた。RAGEの3人が持ち込んだ硬質なリズム隊の上に、その声をフルレンジで載せる——AUDIOSLAVEの設計はそこに賭けられている。
3作のクレジットを追うと、歌詞はすべてコーネルが書き、曲はバンド4人の共同名義になっている。言葉の側は、最初から最後まで彼一人が引き受けていた。失恋、後悔、内省、再生。テーマは2作目から3作目にかけて内側へ深まり、彼が自分の中の何を取り出していたかが見える。
「Like a Stone」について、コーネル自身はこう説明している。ホテルの部屋に座った男が死について考えている歌で、どこへ行くのか、それが何を意味するのか、可能性を一つずつ並べていく歌なのだと。2002年、38歳の時の言葉だ。2017年5月のデトロイトのホテルと重ねたくなる誘惑は湧く。そこは踏みとどまる方がいい。重さは、声にも言葉にも2002年の時点で既に乗っていた。
2017年1月20日の3曲は、もう一度どこかで聴ける形では戻ってこない。残ったのは3枚のスタジオアルバムと、あの夜の断片映像と、金庫の中の音だ。モレロは2025年11月の取材でも、未発表曲が「アルバム1枚分ある」と認めながら、出す準備はまだ整っていないと語っている。これだけある、と言えるし、これしかない、とも言える。どちらの側から聴き始めても、6年分の音はそこに残っている。

