LAMB OF GOD『Into Oblivion』レビュー——最新作でバンドはどこへ行ったのか

アルバムレビュー
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好きなバンドの新作を待つ時間は、ある種の緊張を伴う。前作を何十回も聴き込んで、次に何が来るかを想像し続ける——あの感覚だ。ラム・オブ・ゴッド(Lamb of Godは、そういった期待と不安を同時に呼び起こすバンドだった。だが、2026年3月13日に最新作『Into Oblivion』がリリースされた。このレビューは、繰り返し聴き込んだその記録だ。久しぶりに腹の底から「やられた」と思える一枚に出会った。

グルーヴとスラッシュの交差点で——アルバム全体像

12枚目の到達点

ラム・オブ・ゴッドは、アメリカン・ヘヴィ・メタルの旗手だ。グルーヴメタルスラッシュメタルの境界線を自在に踏み越えてきた。前作『Omens』(2022年)から約3年半。今作はバンドの12枚目のスタジオアルバムだ。プロデューサーはジョシュ・ウィルバー(Josh Wilbur)が担当した。全10曲・約39分——この凝縮感が今作の強さを象徴している。

アルバム全体のトーンは重く、暗い。しかしただ重いだけではなく、各曲がそれぞれの速度と密度を持って展開する。スロウなグルーヴが引力を生む曲があれば、スラッシュ的な爆発で突き進む曲もある。その振れ幅が約39分を長く感じさせない——終わったあとに「もう一度」と手が伸びる構成だ。

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12枚目にして研ぎ澄まされたグルーヴと怒りが同居するアルバム。通して聴くことで構成の妙が際立つ。

タイトルトラック「Into Oblivion」——怒りの起点にして、今作の名刺

最初の1分で全てがわかる

1曲目にして、バンドが2026年に何を鳴らしたいのかが凝縮されている。まず2本のギターだ。マーク・モートン(Mark Morton)が叩き込むリフは重厚で、そこにウィリー・アドラー(Willie Adler)が絡んで猛烈なスピード感を生んでいる。その上をアート・クルーズ(Art Cruz)のドラムが締め上げ、細部には緻密なパターンが刻まれている。そこへランディ・ブライス(Randy Blythe)の咆哮が重なると、それだけでメタルを聴いている意味を肌で感じる。

歌詞は社会的な批評に満ちている。ランディが描くのは特定の出来事ではなく、「社会の連帯感が静かに崩れていく」という普遍的な不安だ。叫んで終わりではなく、怒りの奥に冷静な観察眼があるから、何度聴いても言葉が刺さり続ける。アメリカ社会を生きる彼らのリアルな視点こそが、楽曲を単なる「ヘヴィな音」以上のものにしている。

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2026年のタイトルトラック。音と映像が重なった瞬間にこのバンドの本気度が伝わる。

五人のケミストリーが生む音の密度

2本のギターが会話する

このアルバムを語るとき、ギタリスト2人の仕事を無視しては通れない。モートンとアドラーのリフワークは、長年の共同作業によって研ぎ澄まされてきた。今作ではその精度がいっそう上がり、チャグと技巧的なフレーズが曲ごとに異なる顔を見せる。どの曲も「似たような音が続く」という感覚がないのは、2本のギターが会話しながら音を構築している証拠だ。

ジョン・キャンベル(John Campbell)のベースも全編を通して欠かせない。意識して耳を傾けるほど、低域が全体の重さを統制していることがわかる。アート・クルーズ加入後のラム・オブ・ゴッドはリズム面で新しい局面を迎えてきたバンドで、今作でのプレイは技術的でありながら、楽曲への奉仕という意識が一貫している。五人が同じ方向を向いているバンドの強度が、この1枚には詰まっている。

中盤の呼吸と「St. Catherine’s Wheel」の引力

静と動の使い分け

4曲目「The Killing Floor」は、アルバム中でもっともグルーヴが前面に出た1曲だ。ミドルテンポのリフが生み出す引力は強烈だ。ライヴでオーディエンスが一体になる光景が目に浮かぶ。続く5曲目「El Vacío」はスペイン語タイトルを持つ。内省的なムードへと舵を切る曲だ。この静と動の使い分けが、アルバム全体に呼吸感を与えている。重さだけで押し切らない意識が、随所に感じられる。

6曲目「St. Catherine’s Wheel」は今作のハイライトだ。最も繰り返し聴いた一曲でもある。フックのメロディが明確で、ランディの声域が存分に引き出されている。ただヘヴィなだけでなく「聴かせる」という意識が宿っている。それがこの曲を長く手元に置きたくなる理由だ。実は、ライヴでどれほど映えるか——想像するだけで楽しい。

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アルバム中盤のハイライト。聴くたびに新しい発見がある一曲。

終盤が語る「アルバムとしての意志」

10曲が1本の線になる

7曲目「Blunt Force Blues」はシングルとして先行公開された曲だ。入口のキャッチーさと内側のリフの凶暴さが共存しているが、アルバムの流れの中で聴くと全く異なる表情を見せる。続く「Bully」「A Thousand Years」と進むにつれ、アルバムは感情の幅を少しずつ広げていく。重さの種類ではなく、重さの届き方が変わる感覚だ。

最終曲「Devise/Destroy」が終わったとき、10曲が一本の流れとして完成していることに気づく。単なる「良い曲の集合体」ではない。アルバムという単位で設計された作品だ。この構成力こそが、今作を傑出したものにしている大きな理由だろう。

2026年、ラム・オブ・ゴッドはまだ本気だった

今作を聴く前、頭の片隅にある疑念があった。「ラム・オブ・ゴッドはピークを過ぎたか」というものだ。しかし『Into Oblivion』は違った。その懐疑を一曲ずつ丁寧に消していく作りになっている。グルーヴは深く、声は鋭く、言葉には体温がある。2026年のメタルシーンで、これほど腹に響くアルバムはそう多くない。

3年半の距離を埋めるなら、前作『Omens』と続けて聴くと今作の到達点がはっきりする。

12枚目にして、ラム・オブ・ゴッドはグルーヴメタルの新たな基準を示した。
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