川崎の街に5月30日、轟音が落ちる。BLOODAXE FESTIVAL 2026の開演を待つ列が、JR川崎駅東口から徒歩5分のクラブチッタの前で、ぐるりと輪をつくる。床を踏み鳴らす1,300人キャパのフロアで、海外と国内のハードコアが交差する日になる。
BLOODAXE FESTIVAL——国内最大のハードコアが集まる祭
ブラッドアックス・フェスティバル(BLOODAXE FESTIVAL)は、ロイヤル・トゥ・ザ・グレイブのフロントマンKOBAが2000年に始めた、日本のハードコア・シーンを背負ってきたイベントだ。NYHCの影響を受けた新世代から、メタリックなビートダウン勢、ポストハードコアまで——その時代に動いている音をひとつの会場に並べて、観客の耳に直接ぶつける場として続いてきた。
春のSPRINGエディションは秋のメインに並ぶ年2回の柱で、2026年は5月30日に川崎クラブチッタで開かれる。OPEN 11:00/START 12:00、出演者は計14組。BLOODAXE FESTIVAL 2026のラインナップは、海外勢の現行最前線と、日本のハードコアを長年押し上げてきたバンドが同じフロアで鳴る配分になっている。
海外勢の核——SPEED、POISON THE WELL、BIG BOY
ヘッドライナーのスピード(SPEED)は、シドニー出身の5人組。2024年7月にデビュー・アルバム『Only One Mode』をリリースし、同年のARIA賞ハードロック/ヘヴィメタル部門を獲った。2025年4月にはコーチェラのステージに、オーストラリアのハードコア・バンドとして史上初めて立っている。曲は短い。煽る前にもう拳が落ちている。スピードのライブで観るべきは、ボーカルのジェム・シャウ(Jem Siow)が歌から煽りに切り替わる瞬間の声の質感だ。
ポイズン・ザ・ウェル(POISON THE WELL)はフロリダ発、90年代後半から2009年の『The Tropic Rot』までシーンの一角を占めてきたメタリック・ハードコアの古株である。2010年に活動停止を発表したが、2015年からリユニオン公演を断続的に重ねてきた。湿った叙情と速度の同居は、現行のハードコアとは違う重さでフロアに響く。聴き手の集中の質を、その曲が落ちる瞬間だけ強く変える種類の音だ。
ビッグ・ボーイ(BIG BOY)はカリフォルニア州サンノゼ、ベイエリアのクルー。混沌と毒気を撒き散らす重量級のサウンドで、ハードコアの現行最前線で動いている。初期EPの『Demonstration 2019』から最新作までの粗さと密度は、フェスの早い時間帯にこそ効くタイプの音である。
日本の柱——LOYAL TO THE GRAVE、NUMB、KNOSIS
ロイヤル・トゥ・ザ・グレイブ(LOYAL TO THE GRAVE)は東京を拠点に1998年から動いてきた中堅のメタリック・ハードコア。2024年にはトリプルB・レコーズ(Triple B Records)から7年ぶりのEP『Rectitude』をリリースし、テラー(TERROR)のスコット・ヴォーゲルがゲストで歌に加わっている。本イベントの源にいるバンドであり、KOBAがこの日のステージで何を選ぶかで会場全体のトーンが決まる。
ナム(NUMB)は1995年から活動する、日本のビートダウン・ハードコアの先駆者。バイオハザード(BIOHAZARD)やマッドボール(MADBALL)に連なるNYスタイルのグルーヴを国内に持ち込んだバンドである。30年経っても、フロアの落ち方が他のバンドと違う。
ノーシス(KNOSIS)は元クリスタル・レイク(CRYSTAL LAKE)のボーカル木下竜雄のプロジェクトで、2025年8月にデビュー・アルバム『GENKNOSIS』をリリースしたばかりだ。メタル、ハードコア、内省的なサウンドスケープを束ね、現行のメタルコアに新しい呼吸を持ち込んでいる。歌詞はSURVIVE SAID THE PROPHETのヨシ・モリタとの共作で、彼のスタジオで仕上げられた音はフロアでどう鳴るのか、そこは現地で確かめる。
当日の動き方——会場・チケット・導線
会場の川崎クラブチッタは、JR川崎駅東口から徒歩5分・京急川崎駅から徒歩5分。1988年にオールスタンディングの大型ライブホールとして開業し、2002年にリニューアルした老舗のフロアで、キャパは1,300人。前売チケットは¥9,700、当日券は¥10,700。OPEN 11:00/START 12:00で、夕方を超えて回す長尺の構成になる。
タイムテーブルは公式サイト(bloodaxefest.jp/tt)で発表される。出演はオープニングアクトのFALLEN GRACEから始まり、全14組。ヘッドライナーだけを狙って遅く入ると、まだ知らないバンドの一撃を取り逃がす。BLOODAXE FESTIVAL 2026の楽しみ方の核は、序盤の若手から終盤の海外勢までを通しで浴びることにある。
聴き逃さない焦点
スピードのフロアでは、序盤の短い曲を立て続けに浴びてから、ジェム・シャウのMCに耳を切り替える瞬間が来る。スタジオ盤で制御されている怒気は、ライブで制御を外す。その振れ幅の大きさがこのバンドの正味になる。
ポイズン・ザ・ウェルが『The Tropic Rot』からの曲を落としたら、フロアの時間軸がそこだけ少しずれる。湿った叙情のリフが、現行ハードコアの速度に重なる瞬間は短い。メタルコアの源流をたどってきた耳には、最後まで残る種類の音である。
ロイヤル・トゥ・ザ・グレイブが自分たちのフェスで何を選ぶか——その曲順の意味は、現地で読み解くしかない。20年以上続けてきたイベントの主催が、自分の祭で何を観客に渡したいか。新譜の曲が増えるのか、過去のEPが鳴るのか。フロアの揺れ方が、その答えになる。
私はこの祭典を、シーンの体温計として聴きにいく。新譜と過去のEPが、海外勢の現行最前線と国内の幹が同じ床の上で鳴った日のことは、終演後に必ず誰かが書きとめる。5月30日、川崎にいるなら自分の耳でその日に立ち会える。


