Peavey 5150という伝説——エディ・ヴァン・ヘイレンが残したメタルの「標準音」

Peavey 5150という伝説——エディ・ヴァン・ヘイレンが残したメタルの「標準音」 アンプ
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ギターアンプの名前が、そのままメタル史の一ページになった例は多くない。Peavey 5150は、その数少ない例外だ。1992年の発売から30年以上が経った今も、このアンプの音はヘヴィメタルの「当たり前」として世界中のステージで鳴り続けている。なぜこれほど多くのギタリストが5150を選んできたのか。答えは、一人の天才が理想の音を追っていた1990年代初頭にある。

Peavey 5150は、エディ・ヴァン・ヘイレンとPeaveyのエンジニアが1990年から設計に取りかかり、1992年に発売したギターアンプだ。ソルダーノ SLO-100を土台にした高ゲインのリードチャンネルが90年代以降のメタルの歪みの基準になり、2004年の提携解消後は「6505」と名を変えて同じ回路が生き延びている。

1990年、エディ・ヴァン・ヘイレンが「自分の音」を設計した

Peavey 5150——薄暗がりに浮かぶアンプヘッドのコントロールノブ
Photo by Evgeniy Smersh on Unsplash

ヴァン・ヘイレン(Van Halen)のギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン(Eddie Van Halen)は、70年代後半から改造マーシャルで独自のサウンドを築いてきた。その彼が1990年頃、まだ見ぬ音を探していた。組む相手に選んだのが、Peaveyの主任エンジニア、ジェームズ・ブラウン(James Brown)だった。

ソルダーノ SLO-100をベースに

開発の起点は、ソルダーノ(Soldano)の SLO-100だった。エディが当時愛用していたアンプで、高いゲインと豊かなハーモニクスを持つ。その音を土台に、自分だけの一台を突き詰めていく。ここから約2年の開発が始まった。

1992年、Peavey 5150は形になった。最初に世に出たのは「ブロックロゴ」版で、ロゴには「EVH」の文字が刻まれていた。ところが音響機器メーカーのEVが商標侵害を主張する。Peaveyはやむなくロゴをエディのサイン書体へ変えた。これが「スクリプト」版と呼ばれるモデルで、今もコレクターのあいだで人気が高い。

リズム・リード・クランチ——3つの顔

5150は120ワットの真空管ヘッドアンプだ。チャンネルはリズムとリードの2系統。リズムチャンネルにはクランチスイッチが付いていて、これをオンにするとゲインが持ち上がり、リードに迫る歪みが出る。2チャンネルのアンプでありながら、実質3つの音色を手の内に収めている。

「5150」という数字の正体

アンプの名は、カリフォルニア州の法典から来ている。福祉・施設法典の第5150条は、精神的に不安定とみなされた人物の保護収容を定めた条文だ。そこから「ちょっとイカれてる」を指すスラングとして広まった。

エディはもともと、自宅のホームスタジオをこの数字で呼んでいた。その「5150スタジオ」で生まれたのが、ヴァン・ヘイレンの1986年作『5150』だ。サミー・ヘイガー(Sammy Hagar)をボーカルに迎えた最初のアルバムで、全米チャート1位を獲った。

🎵 先行シングル「Why Can’t This Be Love」で鳴っているのが、その時期のエディのギタートーンだ。

スタジオの名、アルバムの名、そしてアンプの名——どれも「5150」でひとつにつながっている。エディにとって、この数字は一種の刻印だったのだろう。

なぜ5150はメタルの「標準音」になったのか

Peavey 5150——暗い部屋に滲む赤と黄の光
Photo by Rudy Dong on Unsplash

リードチャンネルの高ゲインは、90年代以降のメタルが欲しがっていたものとぴたりと噛み合った。のリフ、高速ピッキング、そしてタイトな低音域。5150はそのどれにも応えてみせた。

「ブラウンサウンド」を超えた先に

エディが70年代後半に生み出した独特の歪みは「ブラウンサウンド」と呼ばれる。改造マーシャルから生まれた、柔らかく温かみのある音だ。5150のリードチャンネルは、その原点からもう一歩先へ進んでいる。アタックはより硬く、音はより前へ出てくる。この性格が、90年代メタルの要求とぴたりと合った。

🎬 1986年のアルバム『5150』から。エディがこのトーンを突き詰めた先に、Peavey 5150が誕生した。

2004年——PeaveyとEVHの決別、そして「6505」へ

1992年から2004年まで、エディとPeaveyの蜜月は続いた。その途中で改良版の5150 IIも世に出ている。だが2004年、二人は袂を分かつ。

Peaveyはアンプの製造を止めなかった。同社の創業40周年(1965〜2005年)に合わせ、「6505」「6505+」という名で出し直している。5150が6505に、5150 IIが6505+に対応する。名は変わっても、音の芯はそのまま受け継がれた。

エディのほうはフェンダー(Fender)傘下のEVHブランドと手を組み、2007年に「EVH 5150 III」を発表する。3チャンネル構成という大きな進化を遂げた一台で、「5150」の名はここでようやくエディ自身の手に戻ってきた。

Peavey 5150を愛したギタリストたち

5150と6505の系譜は、90年代から今に至る膨大なメタル名盤を下から支えてきた。なかでもマシーン・ヘッド(Machine Head)のロブ・フリン(Robb Flynn)は、この関係を語るうえで外せないギタリストだ。

ロブ・フリンと「Bubba」

フリンは5150のヘッドを8台持っている。そのうち一台、手を加えないまま残した個体に「Bubba」という名を付けた。この一台はツアーに出さない。厳重に保管しておき、レコーディングのときだけ引っ張り出す。

ステージとスタジオで鳴らすのは5150と6505+のヘッドで、キャビネットはマーシャルを合わせる。デビュー作『Burn My Eyes』の制作でこの音を掴んで以来、組み合わせをほとんど崩していない。

“We were trying to get a modern, heavy tone. And when we came across [the 6505], it was crushing. It’s got a really incredible midrange growl that works so well. That guitar tone has pretty much defined a generation of guitar tone.”

「モダンでヘヴィなトーンを探していたんだ。6505に出会ったとき、その音は打ちのめすようだった。ミッドレンジのうなりが本当に凄くて、狙いどおりに機能する。あのギタートーンが、ひと世代のギターの音を決めたと言っていい」

— Robb Flynn / Guitar World

🎬 2003年作『Through the Ashes of Empires』収録。ロブ・フリンのリフワークとアンプの実力が一体となった一曲だ。

🎵 グルーヴとテクニカルさが融合した、マシーン・ヘッドの転換点となった2003年作。

世代を越えて広がる系譜

トリヴィアム(Trivium)、バレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン(Bullet for My Valentine)、ゴジラ(Gojira)、ノックド・ルーズ(Knocked Loose)。世代もジャンルも異なる彼らが、同じ系譜を受け継いでいる。ゴジラが選んだのはEVH 5150 IIIで、ノックド・ルーズのステージには真空管のヘッドすら載っていない。デジタル・モデラーの中から5150 IIIを呼び出して鳴らしている。

5150のDNAは、いつのまにかメタルシーンの地層そのものに溶け込んでいた。

エディ・ヴァン・ヘイレンは2020年10月6日、65歳でこの世を去った。それでも5150という名のアンプは、今夜もどこかのステージで電源を入れられている。

1990年代に二人の男が生み出したそのサウンドは、ヘヴィメタルの「標準音」として歴史に刻まれている。
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