ドゥームメタル
Doom Metal
成立1970年代末〜80年代前半発祥英/米全盛 1986年前後
遅さと重さを主役に据え、一音を身体に居座らせる音楽
スピーカーの前で最初に来るのは音程でもリフの形でもなく、胸の骨をゆっくり押してくる圧のほうだ。ドゥームメタルはテンポを落とすことで、その一打ずつを聴き手の身体に居座らせる。速い音楽が通り過ぎていくのに対して、ここでは一音が長く留まり、鳴り終わるまで待たされる。
Black Sabbath があの重さを世に出してから、遅さそのものを主役に据えたバンドたちが英・米・欧で別々に火を灯した。Candlemass の『Epicus Doomicus Metallicus』を鳴らすと、荘厳な旋律と地を這うリフが同居していて、悲哀が芝居がかるほど堂々と歌い上げられる。この大仰さこそがエピック・ドゥームの背骨になっている。
Saint Vitus に針を落とせば、こもったファズの中でギターがにじみ、時間が伸びていく感覚に飲まれる。Pentagram のグルーヴには色気があって、重さの中でも腰が揺れる。Trouble は讃美歌めいた合唱を持ち込み、暗さの底に光を差した。同じ遅さでも、鳴り方はバンドの数だけ違う。
後年、Electric Wizard がアンプの歪みを爆音の壁まで押し上げ、ドゥームは煙たい酩酊の音楽へと一歩踏み込んだ。共通しているのは、急がないこと。この音楽は聴き手に速度を明け渡さず、こちらの呼吸を音の遅さに合わせさせてくる。座って、目を閉じて、鳴っている重さに身をあずけてみてほしい。
代表盤
Essential Albums1986
Candlemass
Epicus Doomicus Metallicus
エピック・ドゥームの型を決めた荘厳なデビュー作
1986
Saint Vitus
Born Too Late
こもったファズと遅さのアメリカン・ドゥーム基準
1985
Pentagram
Relentless
色気あるグルーヴを湛えた米ドゥームの古株
1984
Trouble
Psalm 9
讃美歌めいた合唱で暗さに光を差す一枚
2000
Electric Wizard
Dopethrone
歪みを壁まで押し上げた酩酊のドゥーム
まず聴く
Start Here曲名をタップすると、その場で Spotify プレーヤーが開いて再生できます。

